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牧山康志
国政のガバナンス広場
​ブログ

軍拡・軍縮、『友好』 平和を希求する国民の信念             (日米首脳会談を踏まえて)

makiyama@allgovern.com

更新日:2月13日

◎脱線 日々コラム2


 2018年、平成時代の終わりに読売中高生新聞が行ったアンケート調査の結果(注)に、答えた2万980人の中高生の「平成の次の時代に大切にしたい価値観」の1位の得票(8623票)を得たのは「平和」であった。


 日本国憲法はその前文から始まる内容を見れば一目瞭然であるように、国民主権、代表民主制、平和主義、国際協調主義が達成すべき崇高な理想として謳われている。

 日米同盟は、平和を希求する一つの連帯としてあってこそ、国際的な意義をも持つ。軍備はいかなる状況であれ、それが使われれば、もはや平和は失われ、そこに存在するのは紛争であり戦争である。殺し合い、破壊し合う人類の惨めな敗北の姿である。

 軍拡と軍縮、これからの国家・国際社会が取るべき道はどちらか。推定12,520発の核兵器(2023年6月・長崎大学核兵器廃絶研究センター)は、さらに増やすのか、減らすのか。人類が過去に使用した2発の核爆弾は私たち日本人に、そして、世界の人々にどのような意味を突き付けたのか。


 今、もし、東アジア地域に「緊張」が高まるのであれば、「仮想敵国」を想定した軍拡ほど、愚かで危険な選択肢はない。そうした考えは技術的な検討には想定されても外交の表舞台に出るべきものではない。日本は連携の仕方に強弱こそあれ、常にすべての国との平和外交を第一とすべきであるからである。すなわち「緊張」があるならば、その緊張をほぐすべく、より友好関係の構築に力を尽くさなければならない。


 国と国とが連携して不合理な武力攻撃に対し、国際的な正義の下に人類が協働し立ち向かうことは必要であろう。それはテロ集団・暴力的武力集団を対象に想定される。しかし、

今、私たち日本が懸念する国家間の事案があるのであれば、そのときに最優先して行うべきことは、いかにしてその事案を友好的な関係に変えていくのか、ということである。特に共有する文化や価値観をももつ過去2千年の交流の歴史を有する「東アジア地域」において、現時点の政治体制を異にしても、友好的関係を築くのに様々なハードルをクリアするための努力は可能なはずである。むしろ、日本が歴史的に虐待・虐殺を伴う支配や侵略を為した「直近の過去」をどう、和解するのか、それを日本人が自覚し、どう垣根を外していくのか、が重要ではないであろうか。


 日本は、地理的にも歴史的にも現在の立ち位置からも、日米同盟を基軸に東アジアの諸国と米国など「西側諸国」との平和的な橋渡し役になるべきである。

 平和以外の何物をも第一に希求すべきではない。それは国民の信念でありその信念を最上段に掲げて、外交に勤しまなければならない。繰り返しになるが、武力・軍事力を使えばそれは戦争という罠に陥ることを意味し、すなわち墓穴以外の何物でもない。同時に軍備が相手を威嚇するものとなるならば、もはや憲法に書き込むべき軍隊の呈ですらない。

 日・米同盟は、巨大な軍備を備えた同盟である。周辺国であれば、それを「脅威」と感じてもおかしくない、それでは、互いに軍拡競争に陥るばかりである。脅威としないためには、軍拡ではなく、友好の絆を深めることが重要である。


 今後、日本政府が米国とともに協働すべきことは「緊張」に対する対処が、軍備の拡大ではなく、「友好の拡大」であることを共に唱え、相手に伝え、行動し、友好の関係を成立させることである。それこそが大切である。日本と他の国との互いの軋轢に対しては、率直かつ友好的に対話すべきである。対話して対話して対話し尽くすべきである。決して敵対するのではなく、もし、相手が困難を抱えているのであれば、手を差し伸べる、そのような外交政策を行うことで友好の絆を築くことが重要である。そうすることで平和を希求してこそ、国際社会の中でも日米同盟は輝きを増すことになるであろう。


 

(注)読売中高生新聞アンケート:全国の中高生約2万1000人を対象に、「平成後」の時代に大切にしたい価値観などを尋ねるアンケートを実施。1位は「平和」で全体の41%(複数回答)を占めた。アンケートは2018年年7~9月末に実施。17都道府県の58校計2万980人から回答を得た。平成後に大切にしたい価値観については、40個の言葉の中から最大3個まで選んでもらう方式で実施された。





参考

日米首脳共同声明 2025 年2月7日(仮訳)   外務省HPより抜粋


平和のための日米協力

 両首脳は、日米安全保障条約の下での二国間の安全保障・防衛協力が、かつてないほ ど強固になっていくことへの共通の願望を表明し、日米同盟が、インド太平洋及びそれ を超えた地域の平和、安全及び繁栄の礎であり続けることを強調した。日本は、日本の 防衛力の抜本的強化への揺るぎないコミットメントを改めて表明し、米国はこれを歓迎 した。


 米国は、核を含むあらゆる能力を用いた、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミ ットメントを強調した。両首脳は、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されるこ とを改めて確認し、尖閣諸島に対する日本の長きにわたり、かつ、平穏な施政を損なお うとするあらゆる行為への強い反対を改めて表明した。


 日本は日米安全保障条約及び日米防衛協力のための指針に沿って、平時から緊急事態 に至るあらゆる状況への切れ目のない対応により、インド太平洋地域の平和及び安全を 維持していく上での自らの役割を再確認した。これは、2015年の平和安全法制によ り一層可能となり、日米同盟の抑止力と対処力を強化している。

 

 両首脳は、一層厳しく複雑な安全保障環境に対処すべく、自衛隊及び米軍のそれぞれ の指揮・統制枠組みの向上、日本の南西諸島における二国間のプレゼンスの向上、より 実践的な訓練及び演習を通じた即応性の向上、拡大抑止の更なる強化並びに同盟のサプ ライチェーン及び海洋を含む日米の防衛産業力を強化する共同生産、共同開発及び共同 維持整備を含む防衛装備・技術協力の推進によるものを含む防衛・安全保障協力の向上 を通じ、日米同盟の抑止力・対処力を更に強化していく意図を有することを確認した。 日米は、民生宇宙並びに航空、科学及び両国の宇宙飛行士が参加する国際宇宙ステーシ ョン(ISS)へのクルー10ミッションや、アルテミス計画の将来のミッションでの月面 探査を含む有人探査に係る強力なパートナーシップを継続する意図を有する。日米はま た、AI及び情報共有を深化するための安全かつ強靱なクラウドサービス等の新技術の 活用によるものを含む、サイバー空間の分野における二国間の安全保障協力を拡大する 意図を有する。米国は、日本の防衛予算増加の好ましい傾向により下支えされた、20 27年度までに日本を防衛する主たる責任を確固たるものとする能力を構築すること、 そして、この重要な基盤の上に、2027年度より後も抜本的に防衛力を強化していくことに対する日本のコミットメントを歓迎した。


 両首脳は、抑止力を維持し、地元への影響を軽減するため、辺野古における普天間飛 行場代替施設の建設及び同飛行場の返還を含む、沖縄統合計画に従った在日米軍再編の 着実な実施が極めて重要であることを確認した。


 両首脳は、上記で言及した協力を速やかに実施するため、それぞれの外務・防衛担当 閣僚に対して、日米安全保障協議委員会(SCC:「2+2」)を早期に開催するように 指示した。

 
 
 

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